サンヤマ(総制)実践の流儀とは?|ヨーガスートラ3章6節
ヨガ哲学を学ぶにあたって最重要となる文献「ヨーガスートラ」原文から、「サンヤマ(総制)」について、わかりやすく解説しています。
「サンヤマ(総制)」とは、アシュターンガ・ヨーガ(ヨガ八支則)の後半3部門である「ダーラナー(集中)」「ディヤーナ(瞑想)」「サマーディ(三昧)」の三つを合わせ行う、三位一体のヨガ修行です。
サンヤマを習得したあかつきには、智慧(プラジュニャー)の光が輝くとされます。
この連載「まいにちスートラ」のサンヤマに関する記事をまとめます。復習にお役立てください。
- 3章1節 ダーラナー(集中)の定義|読む▶
- 3章2節 ディヤーナ(瞑想)の定義|読む▶
- 3章3節 サマーディ(三昧)の定義|読む▶
- 3章4節 サンヤマ(総制)の定義|読む▶
- 3章5節 サンヤマ(総制)の効果|読む▶
今回の記事「ヨガ―スートラ」第3章6節では、サンヤマ(総制)という名の三位一体のヨガはどのように実践されるべきなのか、修行の在り方が示されます。
ヨーガスートラ第3章6節|サンヤマ習得の手順
音|3-6
tasya bhūmiṣu viniyogaḥ
タッシャ ブーミシュ ヴィニヨーガハ
https://youtube.com/clip/Ugkx3epkvQDYwcZe7FlbsReh95lVSAGYQqOZ?si=yucKOh7Xw_bFeq8L
言葉|3-6
tasya bhūmiṣu viniyogaḥ
- tad:それ、かれ
- bhūmi:大地、土地、地方、土壌、地点、場所
- vi-niyoga:配分、任命、訓令、命令、適用、使用、応用、関係、相互関係
意味|3-6
サンヤマは諸段階において用いる
サンヤマの修行は、一歩ずつ階段を上るように
「ヨーガスートラ」第3章6節のスートラは、たった三語から構成されています。
最重要ワードは、”bhūmi(ブーミ)”です。
ヨガ哲学における「ブーミ」とは?
”bhūmi(ブーミ)”は、辞書的には「土壌」「場所」などの意味をもちますが、「段階」や「階層」を表す言葉としても用いられます。
第3章6節のスートラにおける、”bhūmiṣu(ブーミシュ)”は、”bhūmi(ブーミ)”の複数形かつ「~(場所)において」という意味の語形です。
”bhūmi(ブーミ)”は、「ヨーガスートラ」では、度々登場するワードです。
当教室のヨガ哲学講座「チッタの理論とセルフケア」においても重要キーワードに含まれます。
ヨガの先生なら、知っておきたいヨガ哲学用語の一つ”bhūmi(ブーミ)”、要チェックです!
さて、「ヨーガスートラ」第3章6節を直訳すると、「それ(=サンヤマ)は諸段階に用いる」となりますが、具体的にどういうことなのか、ちょっと想像がつきにくいですよね。
何の段階なのか?段階はいくつあるのか?など、詳細は語られません。
そんなときにガイドとして役に立つのが、ヴィヤーサ先生の註解です。
サンヤマを用いる諸段階とは?
ヴィヤーサ註解から読み解く
それでは、ヴィヤーサ先生の註解を読んでみましょう。
翻訳者である本多先生は「サンヤマ」を「綜制」と訳しています。
この綜制は、得られた段階のすぐ次の段階に適用される。
何故なら、低い段階を未だ得ずして、すぐ次の段階を飛び越え、最終段階において綜制を得ることはないからである。
これ(=最終段階における総制)なくして、どうしてそれに知恵の輝きがあろうか。また、上位の段階を得た者にとって、低位の段階にある他人の心を知ることなどに対する総制がある、とするのは正しくない。
何故なら、その意味が違ったふうに理解されているからである。
ヨーガは、この段階はあの段階のすぐ次である、という点が教えられるだけである。どのようにしてか。何故なら次のように言われているからである。
「ヨーガによりてヨーガを知れ。ヨーガはヨーガより生ず。しかるに、ヨーガによりて注意深くなった者は、ヨーガを永く楽しむ。」
『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
いかがでしょうか。
ヴィヤーサ先生の註解によれば、サンヤマは今獲得できているレベルから、そのすぐ次のレベルへと、ステップバイステップで用いよと述べます。
一段階でもレベルを飛ばしてしまうと、最終目標となるレベルには到達できまい、と警告します。
まとめ|ヨーガスートラ3章6節
ヨガ修行において、サンヤマ(総制)は段階的に実践されるもの。
その段階を飛ばしたり、低い段階に逆戻りしてそこで満足していては、サンヤマ習得の効果である智慧の光が輝くこともありません。
基礎を理解してこその応用・発展・発見であり、その逆はない、というのは現代にも通じる学習・研究の基本ですね。
まずはやさしいものから攻略せよ。
ヨガ修行の階段は一段ずつ、飛ばすことなく上っていくべし、ということでしょう。
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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。
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参考文献・資料
- Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
Youtube動画、広告表示あり。女性の声。 - 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
- 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』 Excel Books (2016)
- 『図説ヨーガ・スートラ』 伊藤 武 出帆新社 (2016)
- 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
- 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
- 『漢訳対照 梵和大辞典』 荻原雲来, 鈴木学術財団 山喜房佛書林 (2012)
- 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
- 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
- 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
- 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
- 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』 中央公論社 (1969)
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