サンヤマ(総制)とは?|ヨーガスートラ3章4節
ヨーガの根本経典「ヨーガスートラ」から、アシュターンガ・ヨーガ(ヨガ八支則)を確認してきました。
ヨガ八支則とは、ヨーガの八部門からなる実修法です。
「ヨーガスートラ」において、ヨガ八支則のトピックが始まるのは、第2章「サーダナ・パーダ」の28節からです。
ヨガ八支則の各部門のうち、(1)ヤマ、(2)ニヤマ、(3)アーサナ、(4)プラーナーヤーマ、(5)プラティヤーハーラ、の前半五部門は、第2章で述べられます。
ところが、残りの後半三部門、(6)ダーラナー(7)ディヤーナ(8)サマーディ、は、章を区切り、第3章「ヴィブーティ・パーダ」の1節目から始まります。
ヨガ八支則という同じトピックなのに、何故わざわざ章をまたぐのか?と思いますよね。
その理由は、第3章の主題が、ヨガ八支則の後半三部門を合わせて実践する意義についてだからです。
それでは、「ヨーガスートラ」第3章4節を見ていきましょう!
ヨーガスートラ第3章4節|サンヤマ(総制)の定義
音|3-4
trayamekatra saṃyamaḥ
トラヤメーカットラ サンヤマハ
https://youtube.com/clip/UgkxjkN5KZ2jQSUmahCRBYdbtOrjOdxnh1kp?si=JQFOEyF-aq8brQ5j
言葉|3-4
trayam-ekatra saṃyamaḥ
- traya:三重の、三の;三より成る、三種の
- eka-tra:一つに、同一に、一所に、共に、
- saṃyama:阻止、抑制;感覚の制御、自制;(yogaにおける)精神の集中;努力
意味|3-4
(ダーラナー・ディヤーナ・サマーディの)三つを合わせ一つの対象に行うのがサンヤマである
サンヤマ(総制)とは、三位一体のヨガ修行
「サンヤマ」の言葉の意味は?
“saṃyama(サンヤマ)”という、新しいワードの登場です。
サンヤマという語は、”saṃ(いっしょに)⁺√yam(制御する)” に派生し、通常の意味は「厳しい制御、苦行、宗教的献身」です。
「ヨーガスートラ」において編纂者パタンジャリは、”saṃyama(サンヤマ)”を新たに定義づけしました。
ヨガ八支則の最後の三支則・ダーラナー(集中)・ディヤーナ(瞑想)・サマーディ(三昧)を総称して「サンヤマ」と呼んだわけです。
「ヨーガスートラ」におけるサンヤマの日本語訳には、総合的制御、総制、綜制などがあります。
意味の補足として、特別の集中的修行、瞑想の3ステップ、などの表現があります。
梵和大辞典によると、”saṃyama(サンヤマ)”とは、ヨーガの文脈においては、「精神の集中」や「努力」のことであるとされます。
「サンヤマ」の修行は、具体的に何をする?
「ヨーガスートラ」第3章4節の原文を直訳すると「3つを一つにしてサンヤマである」と、非常にシンプルです。
「3つ」は文脈からダーラナー(集中)・ディヤーナ(瞑想)・サマーディ(三昧)の3つであることは明らかですが、どのように3つを「一つ」にするのでしょうか。
ここは註解者ヴィヤーサの解説が役立ちます。
第3章4節は、以下のように補足されています。
この総持・禅定・三昧の三者が一所において(行われるのが)総制である。同一のものを対象とする三の達成手段が総制と言われる。さて、この三者について、この論典で用いる術語は総制である。
『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
つまり、一人のヨガ修行者が、ひとつの場所で行う、今いっときの修行において、ダーラナー(集中)・ディヤーナ(瞑想)・サマーディ(三昧)を一緒に行うこと、かつ、ダーラナー(集中)・ディヤーナ(瞑想)・サマーディ(三昧)の対象は同一のものであることが、サンヤマ(総制)です。
同じ対象に対して、ひとつながりで施す集中・瞑想・瞑想の極まりが、サンヤマとなります。
まとめ|ヨーガスートラ3章4節
サンヤマ(総制)とは、ダーラナー(集中)・ディヤーナ(瞑想)・サマーディ(三昧)を、一つの対象に対して合わせ行うことです。
以降の「ヨーガスートラ」第3章は、さながらサンヤマ大特集です。
サンヤマを修得した効果、ヨガ修行におけるサンヤマの重要性、”vibhūti(ヴィブーティ)”と呼ばれるサンヤマ習得による超能力が述べられます。
しかし、サンヤマによって得られる超能力への欲を手離す重要性も説かれます。
第3章をまるまる使って教授される三位一体のヨガ修行「サンヤマ」。
以降のスートラに注目ですね。
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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。
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参考文献・資料
- Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
Youtube動画、広告表示あり。女性の声。 - 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
- 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』 Excel Books (2016)
- 『図説ヨーガ・スートラ』 伊藤 武 出帆新社 (2016)
- 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
- 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
- 『漢訳対照 梵和大辞典』 荻原雲来, 鈴木学術財団 山喜房佛書林 (2012)
- 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
- 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
- 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
- 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
- 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』 中央公論社 (1969)
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