プラティヤーハーラ(制感)の効果|ヨーガスートラ 2章55節
「ヨーガスートラ」第2章55節で、「プラティヤーハーラ(制感)」の効果を確認していきましょう。
前回の「まいにちスートラ」の記事では、ヨガ八支則の第五の部門「プラティヤーハーラ(制感)」の定義を読み解きました。
今回はそのその続きとなります。
ヨーガスートラ2章55節|プラティヤーハーラ(制感)の効果
音|2-55
tataḥ paramā vaśyatendriyāṇām
タタハ パラマー ヴァシャテーンドリヤーナーン
言葉|2-55
tataḥ paramā vaśyatā-indriyāṇām
- tatas:それより、そこに、ゆえに
- parama:最も遠い、最後の、最高の、至高の、最大の
- vaśyatā:服従すること、従順
- indriyāṇām:[indriyaの複数形]インドリヤ、感覚器官、感官
意味|2-55
それにより、諸々のインドリヤ(感覚器官)の従順性は最高になる
プラティヤーハーラ(制感)で「インドリヤ」の従順性が最高になる、とはどういうことか?
ひとつ前のスートラ第2章54節において、プラティヤーハーラ(制感)とは、「インドリヤ(感覚器官)」が本来の対象と切り離され、まるで「チッタ(心)」のようになること、と定義されました。
続く第2章55節では、プラティヤ―ハーラ(制感)によって、「インドリヤ」の従順性が最高レベルになる、とその効果が述べられます。
「インドリヤ」とは、耳・身(皮膚)・眼・舌・鼻の5つの感覚受容器のことで、それぞれ、声(音)・触・色・味・香という5つの刺激情報を感知するセンサーです。
この感覚センサー・インドリヤは、常に外部に開いていて、刺激情報をキャッチすると、「チッタ(心)」が、知覚・認知の作用を起こします。
こうして起こる「チッタ(心)」の活動のうち、苦しみや悩みにつながるものが、ヨガでは問題とされます。
プラティヤーハーラ(制感)において、感覚器官「インドリヤ」はその機能をオフにし、「チッタの活動の制止」というヨーガの目的達成に対して完全に服従し、邪魔をしなくなるのです。
ヨガの練習で集中が高まると、耳は外の音やBGMや呼吸音などを捉えてはいるけれど、それらが集中の妨げにならない、という体験をします。
音は聞こえているけれど、それがどんな音か考えていない、音という外部刺激によって心を動かされていない状態です。
むしろ、呼吸音が心を鎮め集中を助けるツールになる時すらあります。
このように、耳をふさぐ、耳栓をする、というような外部刺激に対する強制的な遮断なしに、自然と雑念が取り払われていく体験は、プラティヤーハーラ(制感)の好例と言えるでしょう。
まとめ|ヨーガスートラ2章55節
「ヨーガスートラ」第2章55節では、プラティヤーハーラ(制感)の効果が述べられました。
プラティヤーハーラ(制感)によって、外部刺激の感覚受容器「インドリヤ」は、完全に統御されます。
プラティヤーハーラ(制感)の実修が進んでいくと、ヨーガ修行者の心は、眼から入ってくる色や形、耳から入ってくる音などの外部刺激にも揺らがず、外部の影響から完全に解放されます。
そして、修行者の注意の対象は内部へ絞られます。
プラティヤーハーラ(制感)は、深い瞑想状態という心のありさま「サマーディ」へと向かう過程として、「外部との精神的な切り離し」が行われる部門と言えるでしょう。
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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。
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参考文献・資料
- Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
Youtube動画、広告表示あり。女性の声。 - 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
- 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』 Excel Books (2016)
- 『図説ヨーガ・スートラ』 伊藤 武 出帆新社 (2016)
- 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
- 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
- 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
- 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
- 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
- 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
- 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』 中央公論社 (1969)
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