プラーナーヤーマの2つの効果(1)|ヨーガスートラ 2章52節

ヨーガスートラ第2章52節|プラーナーヤーマの2つの効果(1)

前回の記事・第2章51節では、プラーナーヤーマ(呼吸法)の完成状態を確認しました。
続く第2章52節、53節では、プラーナーヤーマの効果に主題が移ります。
プラーナーヤーマの効果は2つあります。
今回は、その1つめを第2章52節で確認していきましょう。

今日子

このシリーズでは、ヨガの根本経典「ヨーガスートラ」を分かりやすく、シンプルに学びます。

ヨガインストラクターさんは、哲学分野の復習に。
ヨガ哲学が難しいと感じている人は、このうえなく分かりやすい解説を。
ヨガの真髄「ヨーガスートラ」に、気軽に触れていただくための「まいにちスートラ」です。ご活用くださいね。

ヨーガスートラ2章52節|プラーナーヤーマの効果(1)

音|2-52

tataḥ kṣīyate prakāśāvaraṇam

タタハ クシーヤテー プラカーシャーヴァラナン

https://youtube.com/clip/UgkxxmJaM5qlIPuGDRUCme76QKjNoZMKzhjx?si=crPg4khIaOwJP9sU

言葉|2-52

tataḥ kṣīyate prakāśa-āvaraṇam

  • tatas:ゆえに、それから、その後
  • kṣīyate:減る、欠ける、過ごす、尽くす、滅す、死す
  • prakāśa:光、壮麗、顕現、栄光、拡散、知識、笑い
  • āvaraṇa:包むこと、覆うこと、衣服、遮断、保護

意味|2-52

プラーナーヤーマの完成により、光輝を覆い隠していたものが滅ぼされる

プラーナーヤーマの効果「プラカーシャ(光輝)」とは?

「ヨーガスートラ」第2章52節では、プラーナーヤーマの2つの効果の1つめが提示されます。

プラーナーヤーマの完成により、”prakāśa(プラカーシャ:光輝)” の “āvaraṇa(アーヴァラナ:カバー)” が取り除かれる、といいます。
つまり、「これまで遮られていた光が現れる」ということになりますが、この表現、抽象度が高く比喩的ですよね。

具体的に「プラカーシャ」とは何を指し示すのか、検証していきましょう。

サンスクリットの「プラカーシャ」の意味とは?

まずは、サンスクリットの “prakāśa(プラカーシャ)” の辞書的な意味を確認します。
菅原誠氏(2021)は、プラカーシャには、光、壮麗、顕現、栄光、拡散、知識、笑いなどの意味があると述べます。
このように、サンスクリットの単語は重層的な意味を持つため、幾通りにも解釈できるんですね。

「ヨーガスートラ」の主題や、これまでの文脈を考慮すると、「光」「顕現」「拡散」「知識」あたりが、「プラカーシャ」の意味として関連が高そうですね。

「ヨーガスートラ」における「プラカーシャ」の日本語訳は?

「ヨーガスートラ」を研究した諸先生方は、「プラカーシャ」をどのような日本語に置き換えたのか、確認してみましょう。

「ヨーガスートラ」における「プラカーシャ」の日本語訳比較

  • (真知の)照明 / バラモン教典・原始仏典(1969)
  • 照知 / 本多(1978)
  • 心のかがやき / 佐保田(1983)
  • (弁別知の)照明 / 中村(1996)
  • 内なる光 / スワミ・サッチダーナンダ(2008)
  • 内的な光明 / ヴィディヤーランカール(2014)
  • 瞑想する知性の働き / 向井田(2015)
  • [般若(プラジュニャー)の]光輝 / 伊藤(2016)
  • 光輝 / 菅原(2021)

以上のことから、先行研究では、「プラカーシャ」の「光」「知識」という意味が強調されてきたことが分かります。

「ヨーガスートラ」註解から「プラカーシャ」を読み解く

ここで、ヴィヤーサ先生の註解に着目します。
ヨーガスートラの日本語訳には、註解の内容が加味・補足されていることが多いからです。

註解者ヴィヤーサは、第2章52節に対して以下のように註釈します。

諸調息を反復練習するから、このヨーガ行者には、識別知を覆っている業が尽きる。

さて、照知を覆い輪廻に結びつく彼の業は、調息の訓練によって弱くなり、瞬間毎に尽きていく。

『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)

ヴィヤーサ先生は、「プラカーシャ」とは、「識別知」という智慧の光を、「アーヴァラナ」は、識別知という光を覆い隠す「業(ごう)」を意味すると註釈しました。

今日子

「識別知」「業」は、ともにヨーガスートラの重要キーワードです。
ヨーガ実践により体得したいものが「識別知」であり、「業」は無くしていくべきものです。

「識別知」「業」については、別の機会でガイドしていきますね。
今の段階では、プラーナーヤーマは、ヨーガの目的達成に迫る凄い効果がある、と認識しておきましょう。

まとめ|ヨーガスートラ2章52節

「ヨーガスートラ」第2章52節では、プラーナーヤーマ(呼吸法)の完成によって得られる効果のうちの1つめが説明されました。

プラーナーヤーマの完成によって、智慧という光を覆っていたカバーが取り除かれ、智慧の光が輝きを取り戻します。

今日子

ヨガ八支則の各部門・各項目実践の効果について、多くが一節にまとめて言及されます。
しかしプラーナーヤーマの効果は、第2章52節、53節と、わざわざニ節にわたって言及されます。
したがって、プラーナーヤーマは八支則のなかでも、重要な部門と考えられます。

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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。

参考文献・資料

  • Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
    Youtube動画、広告表示あり。女性の声。
  • 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
  • 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』  Excel Books (2016)
  • 『図説ヨーガ・スートラ』 伊藤 武 出帆新社 (2016)
  • 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
  • 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
  • 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
  • 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
  • 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
  • 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
  • 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』  中央公論社 (1969)

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