プラーナーヤーマの完成|ヨーガスートラ 2章51節

ヨーガスートラ2章51節 プラーナーヤーマの完成

前回の記事・第2章50節では、プラーナーヤーマ(呼吸法)の実践方法を確認しました。
第2章50節において、プラーナーヤーマでは、息止めが起きるタイミングによって3つのバリエーション、つまり「型」があると説明されました。
具体的には、1)吐く息の後、2)吸う息の後、3)呼吸の停止中、の3つの型です。

続く第2章51節では、4つめの型が登場します。確認していきましょう。

今日子

ヨガの根本経典「ヨーガスートラ」を、一節ずつ声に出し、その意味を理解するシリーズ「まいにちスートラ」です。
時折、ヨーガの原点に立ち戻り、皆様の練習に役立ててくださると嬉しいです。

ヨーガスートラ2章51節|プラーナーヤーマの完成

音|2-51

bāhyābhyantaraviṣayākṣepī caturthaḥ

バーヒャービャンタラ ヴィシャヤークシェーピー チャトゥルタハ

https://youtube.com/clip/Ugkxj21-sslrGad12ioDeAVjpP6G-RVZOjM9?si=6HnpOsM1xqA40t1B

言葉|2-51

bāhya-ābhyantara-viṣaya-ākṣepī caturthaḥ

  • bāhya:外の、外部の
  • abhyantara:内の、近い、親しい
  • viṣaya:感覚、物質、活動領域、主題、限界、感覚の対象、客体、など。
  • ākṣepin:~に関する、超えるところの、捨てるところの
  • caturtha:第四の、四番目の

意味|2-51

呼気、吸気の対象の放棄が、第四のプラーナーヤーマである

  ※呼気:吐く息 ※吸気:吸う息

プラーナーヤーマにおける完成形「第四の型」とは?

「ヨーガスートラ」第2章51節における、”caturtha(チャトゥルタ:四番目の)”は、プラーナーヤーマの第四の型のことです。
「呼気、吸気の対象を放棄する」というのは、どういうことなのでしょうか。
そして、第三の型とは、どのような違いがあるのでしょうか。見ていきましょう。

プラーナーヤーマにおける対象(viṣaya:ヴィシャヤ)とは?

ヴィヤーサは註解で、「呼気、吸気の対象」を、1)deśa(デーシャ:場所)、2)kāla(カーラ:時間)、3)saṃkhyā(サンキャー:回数)の3つとみなします。
この3つは、前節2章50節で登場したプラーナーヤーマ練習の3つの観点のことです。

プラーナーヤーマの練習を進めていくと、「呼気、吸気の対象」、つまり3つの観点が、長く微細という方向に向かっていきます。
具体的には、呼吸の一回換気量が減り、1回の呼気・吸気は長くなり、結果的に呼吸回数が減る、という方向です。

プラーナーヤーマ第三と第四の型の違いは?

「ヨーガスートラ」第2章51節におけるヴィヤーサの註解によると、プラーナーヤーマ第三の型とは、これら3つの観点が顧みられることなく突如、呼吸の流れがなくなって起こる息止めです。

そして、プラーナーヤーマ第四の型とは、これら3つの観点を慎重に管理しながら段階的に練習を積み、やがてこれらの観点から離れ(放棄・超越し)、呼吸の流れがなくなって起こる息止めです。

プラーナーヤーマ第三の型は、練習しているうちに突如起こる、偶発的なもの。
一方、第四の型は、修行を積んで獲得されるもの、ということですね。

第四の型で、プラーナーヤーマが完成する

続く第2章52節では、プラーナーヤーマの効果が説明されていくことから、第四の型の修得をもってプラーナーヤーマの完成と考えてよいでしょう

まとめ|ヨーガスートラ2章51節

「ヨーガスートラ」第2章51節では、プラーナーヤーマ(呼吸法)の完成状態について説明されました。

プラーナーヤーマは、第2章50節に説明された練習方法で段階的に長く微細にしていき、その結果獲得された呼吸の停止状態をもって、完成します。

プラーナーヤーマとは本来、呼気・吸気が長く微細になり、やがて息止めが起こること。

息止め、つまり「クンバカ」の実践は、危険を伴います。
呼吸機能を開発し、生理反応を少しずつ飼い慣らしていく、それこそ「息の長い」訓練が必要になるでしょう。

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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。

参考文献・資料

  • 世界大百科事典 第2版 
  • まんどぅーかのサンスクリット・ページ WEBマルチ梵語辞典
  • Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
    Youtube動画、広告表示あり。女性の声。
  • 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
  • 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』  Excel Books (2016)
  • 『図説ヨーガ・スートラ』 伊藤 武 出帆新社 (2016)
  • 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
  • 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
  • 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
  • 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
  • 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
  • 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
  • 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』  中央公論社 (1969)

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