ヨガのアーサナとは?|ヨーガスートラ 2章46節
「ヨーガスートラ」は、全195節の四部構成。
今回紹介するのは、第2章サーダナ・パーダ「実践部門」で説かれる一節です。
八部門からなるヨガ実践「アシュターンガ・ヨーガ(ヨガ八支則)」の一部門「アーサナ(坐法)」の定義を読み、唱え、意味を確認しましょう。
ヨーガの教科書・パタンジャリの「ヨーガスートラ」を、1回3分、1節ずつ読んで、ヨガ実践の糧にしていきましょう、という企画です。
ヨガ講師・依田今日子の「まいにちスートラ」をよろしくお願いいたします。
ヨーガスートラ2章46節|アーサナの定義
音|2-46
sthirasukhamāsanam
スティラ スカマーサナン
https://youtube.com/clip/UgkxmtT9r3-9dTBsPaPiVD65mV5X61WnMA7X?si=5ClgnWZrxEmX60Xr
言葉|2-46
sthira-sukham-āsanam
- sthira:堅固な、強い、不動の、確固たる、ぐらつかない、持続する、確かな、安定した
- sukha:安楽、快楽、幸福、喜び、幸せ
- āsana:座ること、坐法、アーサナ
意味|2-46
安定し快適な姿勢がアーサナ(坐法)である
「ヨーガスートラ」のアーサナは、主に座位のこと
“āsana” というサンスクリットの名詞の語根は、”ās” という動詞で、座る、着座する、という意味です。
アーサナの日本語訳「坐法」と「座法」の違い
「アーサナ」は「坐法」と翻訳されるのが一般的です。
この坐法の「坐」は、「座」と書いてもいいところですが、わざわざ「坐」となっているのは、漢字の意味の違いです。
もともと「坐」は主にすわる「動作」に、「座」はすわる「場所」に用いる漢字でした。
漢字の新表記では「坐」を「座」と換えるので、今は「座法」と書いてもOKです。
日本語に訳さずに「アーサナ」のままでもOK!
ヨガのポーズ名には、パドマ・アーサナ(蓮華坐)、マツヤ・アーサナ(魚のポーズ)などのように、「アーサナ」という言葉がつきます。ほどんどのヨギーは、そのことを知っています。
したがって、”āsana” を「坐法」と、わざわざ日本語に訳さずに、そのまま「アーサナ」と呼んでも違和感はないかと思います。
ヨガのポーズ、「アサナ」はNG、正しくは「アーサナ」
そして、”āsana” の “ā” は、「アー」と長音で読みますので、「アーサナ」が、文法的に正しい読み方です。
けれども、英語のアルファベットでは”asana” と表記しますので、それをローマ字読みをすると「アサナ」と読めてしまいます。
“yoga” を「ヨーガ」ではなく「ヨガ」と呼ぶのが一般化したように、「アーサナ」も「アサナ」と、サンスクリットに基づかない呼び名に変わってしまう可能性がありますね。
せめて”āsana” は、「アーサナ」のままで次世代に伝えたい…。
「ヨーガスートラ」の註解で紹介されるアーサナ数は12
「ヨーガスートラ」の原典では、アーサナの定義や効果が述べられるだけで、具体的なアーサナ名や実践方法は紹介されない、というのが通説です。
しかし、古来からヨーガスートラと一体のものとされてきた、権威ある注釈書「ヨーガ・バーシャ」には12のアーサナが具体的に挙げられます。
ほとんどが座る姿勢なんですね!
ただし「寝台坐」は、現在のアパナ・アーサナ(ガス抜きのポーズ)のような仰臥位のようです。
ちなみに、向井田(2015)先生は、古典で記されているとして、上記と重複した11のアーサナを紹介しています。
まとめ|ヨーガスートラ2章46節
「ヨーガスートラ」第2章46節ではアーサナ(坐法)の定義が述べられました。
不動にして安楽なのがアーサナです。
「アーサナ」の語根「アース」は、座る、という意味であり、ヨーガスートラでは主に坐位を指す、ということが分かりました。
現代のヨガでは、座位のほか立位や逆転など様々な姿勢をアーサナとして練習します。
「ヨーガスートラ」で説かれるヨーガのコンセプトと、現在行われているヨガの実態の間には、隔たりがあるのですね。
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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。
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参考文献・資料
- goo辞書 小学館 デジタル大辞泉
- まんどぅーかのサンスクリット・ページ WEBマルチ梵語辞典
- Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
Youtube動画、広告表示あり。女性の声。 - 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
- 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』 Excel Books (2016)
- 『図説ヨーガ・スートラ』 伊藤 武 出帆新社 (2016)
- 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
- 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
- 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
- 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
- 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
- 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
- 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』 中央公論社 (1969)
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