クリヤーヨガとヨガ八支則の違いは?『ヨーガスートラ』第2章ガイド

ヨガ哲学を学ぶ|パタンジャリのヨーガスートラ かんたんガイド第2章

ヨガ哲学を勉強している人にとって、『ヨーガスートラ』は必読の書。
数多くの翻訳版がありますが、内容が難しいですよね。

私は2010年からヨガインストラクターをしています。
かつてはヨガ哲学に全く自信がありませんでしたが、試行錯誤の末、『ヨーガスートラ』を勉強するコツをつかみました。
その方法は、初心者でもヨガ哲学が圧倒的にわかりやすくなる学び方とは?という記事で、紹介しています。

さらに、『ヨーガスートラ』第1章のキーワードとその意味・要約は、ヨガ指導者のための『ヨーガスートラ』第1章かんたんガイド でお伝えしています。

さて、今回は『ヨーガスートラ』 第2章をガイドしていきます。

ヨガ指導者なら覚えておくべきキーワードが目白押し!
それでは、はじめましょう。

第2章 サーダナ・パーダ(実践部門)

第2章では、ヨガのゴール・サマーディに至るための、具体的な実践(サーダナ)が明らかにされます。
前半は、「クリヤーヨーガ」。
後半は、「ヨガ八支則」つまり 「アシュターンガ・ヨーガ」の全体像と、その一部の詳細が語られます。
中間部では、これらの実践の効果として、「苦悩」の弱化・特別な知恵の獲得が紹介されます。

八支則の詳しい内容は、別の機会にガイドしますので、今日はまず、骨子の把握に専念しましょう。
ヨガ指導者ならば、八支則の名前・順番・意味をスラスラと言えるようにしておきたいですね。

サマーディへの道(3)クリヤー・ヨーガ

章・節

第2章1節・2節

要約

クリヤー・ヨーガは、タパス、スワディヤーヤ、イーシュヴァラ・プラニダーナの3つからなります。
クリヤー・ヨーガは、サマーディをもたらし、クレーシャ(煩悩)を弱めます。

キーワード

  • クリヤー・ヨーガ:行動のヨガ
  • タパス:苦行。自己規律。
  • スワディヤーヤ:学習。聖典読誦。自己探究。
  • イーシュヴァラ・プラニダーナ:主宰神への祈念。自然の摂理に委ねること。
  • サマーディ:深い瞑想状態。三昧(さんまい)。
  • クレーシャ:苦悩。煩悩(ぼんのう)。

煩悩(ぼんのう)とは、”身心を悩まし煩わせる心のはたらき”。こと。
仏教用語です。

クレーシャ(煩悩)とは

章・節

第2章3-11節

要約


クレーシャ(苦悩)は5つあります。
アヴィディヤ、アスミター、ラーガ、ドヴェーシャ、アビニヴェーシャです。

クレーシャは潜在的な状態のうちに、瞑想によって除去します。

なかでもアヴィディヤ(無知)は、他のクレーシャの土台であり、苦しみの原因になるため、取り除くべきです。

キーワード

  • アヴィディヤ:無知
  • アスミター:自我意識
  • ラーガ:執着。欲望
  • ドヴェーシャ:嫌悪。憎しみ。
  • アビニヴェーシャ:生存欲。死への恐怖。

アヴィディヤ(無知)を取り除く手段

章・節

第2章26節

要約

アヴィディヤ(無知)を取り除く手段は、ヴィヴェーカ・キャーティの獲得です。

キーワード

  • ヴィヴェーカ・キャーティ:プルシャとプラクリティの峻別。識別知。

「プルシャ」「プラクリティ」は、ヨーガ学派・サーンキヤ学派の概念でしたね。
「ヴィヴェーカ・キャーティ」は、「特別で尊い知恵」のようなものと解釈し、次に進みましょう。

サマーディへの道(4)アシュターンガ・ヨーガとは

章・節

第2章28-55節

要約

アシュターンガ・ヨーガを実践すると、クレーシャが消え、ヴィヴェーカ・キャーティを獲得します。

このアシュターンガ・ヨーガは、ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナーヤーマ、プラティヤハーラ、ダーラナー、ディヤーナ、サマーディの8部門からなります。

キーワード

  • アシュターンガ・ヨーガ:ヨガ八支則。ヨガの八実修法。
  • ヤマ:禁戒(きんかい)
  • ニヤマ:勧戒(かんかい)
  • アーサナ:座法
  • プラーナーヤーマ:調気法
  • プラティヤハーラ:感覚の制御
  • ダーラナー:集中
  • ディヤーナ:瞑想
  • サマーディ:深い瞑想状態。三昧(さんまい)。

ヤマ(禁戒)・ニヤマ(勧戒)について

章・節

第2章30-46節

要約

ヤマ(禁戒)は、アヒンサー、サティヤ、アスティヤ、ブラフマチャリヤ、アパリグラハの5つです。

ニヤマ(勧戒)は、シャウチャ、サントーシャ、タパス、スワディヤーヤ、イーシュヴァラ・プラニダーナの5つです。

  • アヒンサー:非暴力
  • サティヤ:正直
  • アスティヤ:盗まない
  • ブラフマチャリヤ:禁欲。節制。
  • アパリグラハ:不要なものを所有しない。
  • シャウチャ:心身の清浄
  • サントーシャ:現状に満足する。知足。
  • タパス:苦行。自己規律。
  • スワディヤーヤ:学習。自己探究。 聖典読誦。
  • イーシュヴァラ・プラニダーナ:主催神への祈念。自然の摂理に委ねること。

『ヨーガスートラ』第2章まとめ

いかがでしたか?
クリヤーヨガと、ヨガ八支則の違い、クリアになりましたか?
以下に、要約をまとめます。

サマーディへ至る方法の3つめが、クリヤー・ヨーガ(行動のヨガ)です。
(サマーディへ至る方法は、1つめはアッヴャーサとヴァイラーギャで、2つめはイーシュヴァラ・プラニダーナであると、第1章ですでに紹介されました。)

クリヤー・ヨーガは、3つの実践からなり、クレーシャ(苦悩)を弱めます。

クレーシャは5つあります。
早い段階で瞑想によって取り除きます。

アシュターンガ・ヨーガ(ヨガ八支則)を実践すると、クレーシャが消えます。

アシュターンガ・ヨーガ(ヨガ八支則)は、ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナーヤーマ、プラティヤハーラ、ダーラナー、ディヤーナ、サマーディの8部門です。

このアシュターンガ・ヨーガの実践が、サマーディへ至る4つめの方法です。

クリヤ・ヨガと、ヨガ八支則の違い。
それは、クレーシャ(苦悩)への実効性です。
クリヤー・ヨーガは、クレーシャを弱めます。
一方で、アシュターンガ・ヨーガは、クレーシャを消し去ります。
また、クリヤー・ヨーガよりもアシュターンガ・ヨーガは段階的、系統的です。
したがって、日々の暮らしでヨガをしたい人にはクリヤー・ヨーガが、本格的に取り組みたい人にはアシュターンガ・ヨーガの実践がふさわしいでしょう。

最後になりますが、「アシュターンガ・ヨーガ」は、ヨガをヨガたらしめる重要な修行システムです。
しかしながら、実際のヨガクラスでは、アーサナの習得を優先し、瞑想を実践(サーダナ)しないことがあります。
これを残念に思うのは、私だけでしょうか…。

さて、次回はいよいよ、ヨギーの本懐・第3章へ!
どうぞお楽しみに。

参考文献

  • 『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』 中央公論社 (1969/5/30)
  • 『解説ヨーガ・スートラ』佐保田鶴治 著 平川出版社 (1983/8/10)
  • 『中村元選集[決定版]第24巻 ヨーガとサーンキヤの思想 インド六派哲学Ⅰ』中村元 著 春秋社 (1996/9/20)
  • 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ著 めるくまーる (2008/6/30)
  • 『ヨーガの哲学』立川武蔵 著 講談社(2013/8/8)
  • 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお 著 アンダーザライトヨガスクールYOGA BOOKS (2015/3/1 )

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