ヨガ指導者のための『ヨーガスートラ』第1章かんたんガイド

ヨガ哲学を学ぶ|パタンジャリのヨーガスートラ かんたんガイド第1章

『ヨーガスートラ』とは、ヨガの教典です。
紀元後550-600年頃に成立したといわれています。
『ヨーガスートラ』は、数多くの和訳本が出版されていますが、内容が難しいですよね。
なかなかスッキリと理解できない…という人もいらっしゃると思います。

「なぜこんなに、スッキリしないのか?」と疑問に思った私は、試行錯誤の末、ようやく『ヨーガスートラ』の知識を整理することができました。
その方法は、初心者でもヨガ哲学が圧倒的にわかりやすくなる学び方とは?という記事で、すでに紹介しました。

そのコツというのは、「キーワードはサンスクリット音のまま覚え、本編を優先し、重要部分の意味を正しく読んでいく」ということでした。

さて、今回は、重要なキーワードやその意味を紹介しながら、 実際に『ヨーガスートラ』 第1章を要約していきます。

ヨガ哲学が苦手なヨガインストラクターさん、新米ヨガインストラクターさん、ヨガを深めたい人におススメの内容です。
それでは、はじめましょう!

第1章 サマーディ・パーダ(三昧部門)

第1章では、ヨガのゴールがサマーディ(深い瞑想状態)であることが明らかにされます。
前半はヨガの定義、サマーディに至る方法、サマーディ達成を妨げる障害、それを取り除く方法などが語られます。
後半は、サマーディの深まりの段階が語られます。

ヨガ指導においては、とくに前半部分の知識の整理・理解が大事になります。
重要なキーワードは、太字で示しますので、この機会に覚えてしまいましょう。

ヨガの定義

章・節

第1章2節

要約

ヨガとはサマーディのことで、チッタ・ブルッティを二ローダすることです。

キーワード

  • サマーディ: 深い瞑想状態。三昧(さんまい)。
  • チッタ・ブルッティ:心の活動
  • ニローダ:抑制。コントロール。

サマーディの境地とは

章・節

第1章3節・4節

要約


サマーディのとき、プルシャは本来の姿にとどまります。
それ以外のとき、プルシャはチッタ・ブルッティと同じ姿のように見えます。

キーワード

  • ドリシュタ:観(み)る者。プルシャのこと。
  • プルシャ:(精神原理における)純粋意識
  • プラクリティ:(物質原理における)現象。観(み)られる対象(観られるもの)。

『ヨーガスートラ』は、インド哲学の一派「ヨーガ学派」の教典です。
「ヨーガ学派」は、「サーンキヤ学派」と密接な関係にあります。
「プルシャ」「プラクリティ」という語は、この二派に共通する概念です。

今は、「ヨガにはこういう思想的背景がある」と受け止め、先に進みましょう。

チッタ・ブルッティの機能

章・節

第1章5-7節

要約

チッタ・ブルッティは5つの機能にわかれ、苦しみを伴うものと伴わないものがあります。
その5つとは、プラマーナ、ヴィパルヤヤ、ヴィカルパ、ニッドラー、スムルティです。
なかでもプラマーナは3種類あり、それはプラッティヤクシャ、アヌマーナ、アーガマです。

キーワード

  • プラマーナ:正しい認識
  • ヴィパルヤヤ:誤った認識
  • ヴィカルパ:概念上の知識
  • ニッドラー:熟睡
  • スムルティ:記憶
  • プラッティヤクシャ:直接知覚
  • アヌマーナ:推論
  • アーガマ :伝承聖典

サマーディへの道(1)修練と離欲

章・節

第1章12-16節

要約

チッタ・ブルッティを二ローダする方法の1番目は、アッビャーサとヴァイラーギャです。

キーワード

  • アッビャーサ:反復練習。修練。
  • ヴァイラーギャ:結果にこだわらない態度。離欲。

サマーディへの道 (2)イーシュヴァラ・プラニダーナ

章・節

第1章23-26節

要約

チッタ・ブルッティを二ローダする2番目の方法は、イーシュヴァラ・プラニダーナです。

キーワード

  • イーシュヴァラ:主宰神。自然の摂理。
  • プラニダーナ:祈念。委ねること。
  • イーシュヴァラ・プラニダーナ:主宰神への祈念。自然の摂理に委ねること。

「イーシュヴァラ」は、特別な「プルシャ」のこと。
ヨーガ派では神様的な存在です。

サマーディへの障害と対処法

章・節

第1章27-30節

要約

イーシュヴァラの呼び名はプラナヴァ(聖音オーム)です。
オームを唱えると、サマーディへのアンタラーヤ(障害)がなくなります。

アンタラーヤとなるのは、
チッタ・ヴィクシェーパ(心の散乱)です。
具体的には、ヴィヤーディ、スティヤーナ、サムシャヤ、プラマーダ、アーラスヤ、アヴィラティ、ブラーンティ・ダルシャナ、アラブダ・ブーミカットヴァ、アナヴァスティ・タットヴァの9種類があります。

キーワード

  • プラナヴァ:聖音オーム
  • アンタラーヤ:(サマーディへの)障害
  • チッタ・ヴィクシェーパ:心の散乱
  • ヴィヤーディ:病気
  • スティヤーナ:無気力
  • サムシャヤ:疑惑
  • プラマーダ:注意散漫
  • アーラスヤ:怠惰
  • アヴィラティ:執着。依存。
  • ブラーンティ・ダルシャナ:誤解。勘違い。
  • アラブダ・ブーミカットヴァ:(サマーディ段階へ)進歩しない
  • アナヴァスティ・タットヴァ:(サマーディ状態が)続かない

サマーディの障害・付随症状とその対処法

章・節

第1章31節・32節

要約

これらのチッタ・ヴィクシェーパ(心の散乱)には、4つの症状が伴います。
その4症状とは、ドゥッカ、ダウルマナスィヤ、アンガメージャ・ヤットヴァ、シュヴァーサ・プラシュヴァーサです。

これらの症状を取り除くために、エーカ・タットヴァ・アッヴャーサを実践すべきです。

  • チッタ・ヴィクシェーパ:心の散乱
  • ドゥッカ:苦悩
  • ダウルマナスィヤ:うつ。落ち込み。
  • アンガメージャ・ヤットヴァ:身体の不調・不安定
  • シュヴァーサ・プラシュヴァーサ:呼吸の乱れ
  • チッタ・ヴィクシェーパ・サハブヴァハ:心の散乱の付随症状
  • エーカ・タットヴァ・アッビャーサ:ひとつの原理の反復練習。瞑想を繰り返し練習すること。

『ヨーガスートラ』第1章まとめ

以上が、ヨガ指導者が知っておきたい『ヨーガスートラ』第1章の要約とキーワードでした。
以下に、要約をまとめます。

ヨガとはサマーディのことで、心の活動を抑制することです。
サマーディとは、深い瞑想状態です。

サマーディへの道のりは、いくつかあります。
1つめは、アッビャーサとヴァイラーギャです。
2つめは、イーシュヴァラ・プラニダーナです。

ところが、サマーディ達成の妨げとなるものがあります。
9つのチッタ・ヴィクシェーパ(心の散乱)です。
これらは、オームを唱えることでなくなります。

さらに、チッタ・ヴィクシェーパには4つの症状が伴います。
心身に辛い症状です。
これらを取り除くには、エーカ・タットヴァ・アッビャーサ(ひとつの原理の反復練習)が有効です。

いかがでしたか?
ヨガの定義の確認と、「チッタ」まわりの知識の整理ができたでしょうか?

もしかしたら、ご存じないキーワードに出会ったかもしれません。
しかし、これらはヨガの伝統的な理論を支える重要な語句。
ヨガ指導者なら知っておくべき知識です。

この機会にぜひ、『ヨーガスートラ』を学びなおしてみませんか。
説得力のあるレッスンを提供し、信頼される指導者になるべく、共に成長していきましょう!

次回更新の記事では、第2章を紹介します。どうぞお楽しみに。

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参考文献

  • 『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』 中央公論社 (1969/5/30)
  • 『解説ヨーガ・スートラ』佐保田鶴治 著 平川出版社 (1983/8/10)
  • 『中村元選集[決定版]第24巻 ヨーガとサーンキヤの思想 インド六派哲学Ⅰ』中村元 著 春秋社 (1996/9/20)
  • 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ著 めるくまーる (2008/6/30)
  • 『ヨーガの哲学』立川武蔵 著 講談社(2013/8/8)
  • 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお 著 アンダーザライトヨガスクールYOGA BOOKS (2015/3/1 )