ヨガ指導者のための『ヨーガスートラ』第1章かんたんガイド
『ヨーガスートラ』とは、ヨガの教典です。
紀元後5世紀の成立といわれています。
『ヨーガスートラ』は、数多くの和訳本が出版されていますが、内容が難しいですよね。
なかなかスッキリと理解できない…という人もいらっしゃると思います。
「なぜこんなに、スッキリしないのか?」と疑問に思った私は、試行錯誤の末、ようやく『ヨーガスートラ』の知識を整理することができました。
その方法は、初心者でもヨガ哲学が圧倒的にわかりやすくなる学び方とは?という記事で、すでに紹介しました。
そのコツというのは、「キーワードはサンスクリット音のまま覚え、本編を優先し、重要部分の意味を正しく読んでいく」ということでした。
さて、今回は、重要なキーワードやその意味を紹介しながら、 実際に『ヨーガスートラ』 第1章を要約していきます。
ヨガ哲学が苦手なヨガインストラクターさん、新米ヨガインストラクターさん、ヨガを深めたい人におススメの内容です。
それでは、はじめましょう!
第1章 サマーディ・パーダ(三昧部門)
第1章では、ヨガのゴールがサマーディ(深い瞑想状態)であることが明らかにされます。
前半はヨガの定義、サマーディに至る方法、サマーディ達成を妨げる障害、それを取り除く方法などが語られます。
後半は、サマーディの深まりの段階が語られます。
ヨガ指導においては、とくに前半部分の知識の整理・理解が大事になります。
重要なキーワードは、太字で示しますので、この機会に覚えてしまいましょう。
ヨガの定義
章・節
第1章2節
要約
ヨガとはサマーディのことで、チッタ・ブルッティを二ローダすることです。
キーワード
- サマーディ: 深い瞑想状態。三昧(さんまい)。
- チッタ・ブルッティ:心の活動
- ニローダ:抑制。コントロール。
サマーディの境地とは
章・節
第1章3節・4節
要約
サマーディのとき、プルシャは本来の姿にとどまります。
それ以外のとき、プルシャはチッタ・ブルッティと同じ姿のように見えます。
キーワード
- ドリシュタ:観(み)る者。プルシャのこと。
- プルシャ:(精神原理における)純粋意識
- プラクリティ:(物質原理における)現象。観(み)られる対象(観られるもの)。
『ヨーガスートラ』は、インド哲学の一派「ヨーガ学派」の教典です。
「ヨーガ学派」は、「サーンキヤ学派」と密接な関係にあります。
「プルシャ」「プラクリティ」という語は、この二派に共通する概念です。
今は、「ヨガにはこういう思想的背景がある」と受け止め、先に進みましょう。
チッタ・ブルッティの機能
章・節
第1章5-7節
要約
チッタ・ブルッティは5つの機能にわかれ、苦しみを伴うものと伴わないものがあります。
その5つとは、プラマーナ、ヴィパルヤヤ、ヴィカルパ、ニッドラー、スムルティです。
なかでもプラマーナは3種類あり、それはプラッティヤクシャ、アヌマーナ、アーガマです。
キーワード
- プラマーナ:正しい認識
- ヴィパルヤヤ:誤った認識
- ヴィカルパ:概念上の知識
- ニッドラー:熟睡
- スムルティ:記憶
- プラッティヤクシャ:直接知覚
- アヌマーナ:推論
- アーガマ :伝承聖典
サマーディへの道(1)修練と離欲
章・節
第1章12-16節
要約
チッタ・ブルッティを二ローダする方法の1番目は、アッビャーサとヴァイラーギャです。
キーワード
- アッビャーサ:反復練習。修練。
- ヴァイラーギャ:結果にこだわらない態度。離欲。
サマーディへの道 (2)イーシュヴァラ・プラニダーナ
章・節
第1章23-26節
要約
チッタ・ブルッティを二ローダする2番目の方法は、イーシュヴァラ・プラニダーナです。
キーワード
- イーシュヴァラ:主宰神。自然の摂理。
- プラニダーナ:祈念。委ねること。
- イーシュヴァラ・プラニダーナ:主宰神への祈念。自然の摂理に委ねること。
「イーシュヴァラ」は、特別な「プルシャ」のこと。
ヨーガ派では神様的な存在です。
サマーディへの障害と対処法
章・節
第1章27-30節
要約
イーシュヴァラの呼び名はプラナヴァ(聖音オーム)です。
オームを唱えると、サマーディへのアンタラーヤ(障害)がなくなります。
アンタラーヤとなるのは、
チッタ・ヴィクシェーパ(心の散乱)です。
具体的には、ヴィヤーディ、スティヤーナ、サムシャヤ、プラマーダ、アーラスヤ、アヴィラティ、ブラーンティ・ダルシャナ、アラブダ・ブーミカットヴァ、アナヴァスティ・タットヴァの9種類があります。
キーワード
- プラナヴァ:聖音オーム
- アンタラーヤ:(サマーディへの)障害
- チッタ・ヴィクシェーパ:心の散乱
- ヴィヤーディ:病気
- スティヤーナ:無気力
- サムシャヤ:疑惑
- プラマーダ:注意散漫
- アーラスヤ:怠惰
- アヴィラティ:執着。依存。
- ブラーンティ・ダルシャナ:誤解。勘違い。
- アラブダ・ブーミカットヴァ:(サマーディ段階へ)進歩しない
- アナヴァスティ・タットヴァ:(サマーディ状態が)続かない
サマーディの障害・付随症状とその対処法
章・節
第1章31節・32節
要約
これらのチッタ・ヴィクシェーパ(心の散乱)には、4つの症状が伴います。
その4症状とは、ドゥッカ、ダウルマナスィヤ、アンガメージャ・ヤットヴァ、シュヴァーサ・プラシュヴァーサです。
これらの症状を取り除くために、エーカ・タットヴァ・アッヴャーサを実践すべきです。
- チッタ・ヴィクシェーパ:心の散乱
- ドゥッカ:苦悩
- ダウルマナスィヤ:うつ。落ち込み。
- アンガメージャ・ヤットヴァ:身体の不調・不安定
- シュヴァーサ・プラシュヴァーサ:呼吸の乱れ
- チッタ・ヴィクシェーパ・サハブヴァハ:心の散乱の付随症状
- エーカ・タットヴァ・アッビャーサ:ひとつの原理の反復練習。瞑想を繰り返し練習すること。
『ヨーガスートラ』第1章まとめ
以上が、ヨガ指導者が知っておきたい『ヨーガスートラ』第1章の要約とキーワードでした。
以下に、要約をまとめます。
ヨガとはサマーディのことで、心の活動を抑制することです。
サマーディとは、深い瞑想状態です。
サマーディへの道のりは、いくつかあります。
1つめは、アッビャーサとヴァイラーギャです。
2つめは、イーシュヴァラ・プラニダーナです。
ところが、サマーディ達成の妨げとなるものがあります。
9つのチッタ・ヴィクシェーパ(心の散乱)です。
これらは、オームを唱えることでなくなります。
さらに、チッタ・ヴィクシェーパには4つの症状が伴います。
心身に辛い症状です。
これらを取り除くには、エーカ・タットヴァ・アッビャーサ(ひとつの原理の反復練習)が有効です。
いかがでしたか?
ヨガの定義の確認と、「チッタ」まわりの知識の整理ができたでしょうか?
もしかしたら、ご存じないキーワードに出会ったかもしれません。
しかし、これらはヨガの伝統的な理論を支える重要な語句。
ヨガ指導者なら知っておくべき知識です。
この機会にぜひ、『ヨーガスートラ』を学びなおしてみませんか。
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説得力のあるレッスンを提供し、信頼される指導者になるべく、共に成長していきましょう!
次回更新の記事では、第2章を紹介します。どうぞお楽しみに。
わかりやすい『ヨーガスートラ』関連記事
参考文献
- 『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』 中央公論社 (1969/5/30)
- 『解説ヨーガ・スートラ』佐保田鶴治 著 平川出版社 (1983/8/10)
- 『中村元選集[決定版]第24巻 ヨーガとサーンキヤの思想 インド六派哲学Ⅰ』中村元 著 春秋社 (1996/9/20)
- 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ著 めるくまーる (2008/6/30)
- 『ヨーガの哲学』立川武蔵 著 講談社(2013/8/8)
- 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお 著 アンダーザライトヨガスクールYOGA BOOKS (2015/3/1 )
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