ヨガで唱える「オーム」とは? 起源・意味・効果を古典から学ぶ!

ヨガで唱える「オーム(OM)」とは?
古典から学ぶ、起源・意味・効果

ヨガレッスンのオープニング・クロージングに唱えられる「オーム(om)」。
参加者全員で息とトーンを合わせ「オーム」と唱えると、思考が日常生活と切り離され、意識が内側に集中し、クラスの一体感が増すような感じがしますね。

ヨガが好きな人は、生徒として、あるいは指導者として、声に出して、心のなかで、繰り返し唱えてきたことでしょう。

そもそも何故、「オーム」を唱えるのでしょう。
どんな意味や理由・目的があるのか、起源はどこなのか、ご存知でしょうか?
また、ヨガにおいてどんな効果があるのでしょうか?

今日は、「オーム」の意味や起源、そのご利益についてお伝えします。
ヨガ好きな人、ヨガインストラクターさん、インストラクターを目指している人におススメの記事です!

「オーム」は、特別な意味をもった聖なる音

「オーム(om)」とは、サンスクリット語の音節のひとつです。
音節とは、母音を含む音のひとまとまりのこと。
「オーム」はもともと、「しかり」「はい」「かしこまりました」というような意味です。
インドでは、聖典の読誦や儀式の開始にあたって唱えられてきました。
また、マントラ(真言)の前後にも唱えます。

ヒンドゥー教では、「オーム」を「聖音(プラナヴァ)」と呼び、特別に尊重します。
その理由は、「オーム」の音節が、不滅の存在・宇宙の根本原理(ブラフマン)と同じことだからです。
「ブラフマン(梵)」とは、真実のことばからなるとされます。

この宇宙の根本原理「ブラフマン(梵)」と、個人の根本原理「アートマン(我)」の本質は同一である、という「梵我一如(ぼんがいちにょ)」は、インドを代表する思想です。
「梵我一如」の境地を体得すると、人は苦しみから永遠に解放され「解脱(げだつ)」に至るとされます。
「解脱」とは「悟り」のことで、インドでは「モークシャ」といい、人生の究極の目標です。

このように、インド思想、特にヒンドゥー教において「オーム」は、特別な意義をもつ、神聖な音なのです。

聖音「オーム」のルーツはどこにある?

「オーム」のルーツは、『ウパニシャッド(奥義書)』という古代インドの神秘的な哲学を記した聖典群にあります。

紀元前800~500年頃成立のウパニシャッドのなかでも古い『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』では、「オーム」が祭式と密接する神聖なものであるとされます。
そして、音節「オーム」を以下のように称えています。

一切の言語は音節オームによって浸透されている。
音節オームこそこの一切である。
音節オームこそこの一切である。

『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』 前田(2016)

そして後の『タイッティーリヤ・ウパニシャッド』においては、「オーム」は宇宙の根本原理「ブラフマン」と同一とみなされるようになります。

オームはブラフマンである。オームはこの一切である

『タイッティーリヤ・ウパニシャッド』 前田(2016)

やがては、聖音「オーム」をブラフマンまたはアートマンに見立て念じることで「梵我一如」を体得し、解脱に至るとされました。
2世紀頃成立の『マーンドゥーキヤ・ウパニシャッド』によると、「オーム」の音は「A・U・M・無音」という4つの音からなるとされています。
この「A・U・M・無音」という4つの音を、「ブラフマン」の4つの状態に見立て瞑想することで、この世の真理「梵我一如(ぼんがいちにょ)」を体得できるとされます。

私たち日本人の耳には、「お・う・む・ん」「お・ん」などと聞こえますが、インドの伝統では「A・U・M」であるとされます。

4世紀頃成立のヒンドゥー教聖典で、今もインドの人々にとって人生の支えである『ヴァガヴァット・ギーター』においても、「オーム」が解脱を助ける強力なツールと明言されます。

「オーム」という一音のブラフマン(聖音)を唱えながら私を念じ、肉体を捨てて逝く者、彼は最高の帰趨に達する。

※私:ここでは神クリシュナ
※帰趨(きすう):帰結

『バガヴァッド・ギーター』第8章13節 上村(1992)

なお、同じくインド生まれの宗教ジャイナ教・大乗仏教でも「オーム」は唱えます。
密教の漢訳仏典ではオームは音写され、「唵(おん)」となります。

「オーム」を念じ唱えることで、悟りが開けるというのは、なんとも神秘的な話ですね。

ヨガにおける「オーム」の役割は?

さて、ヨガの練習において、「オーム」には特別な役割が与えられています。

5世紀頃成立のヨーガ学派の根本経典『ヨーガ・スートラ』によれば、「オーム」は、究極の精神原理で神のような存在「イーシュヴァラ」を表す聖音です。
この聖音「オーム」を繰り返し唱え「イーシュヴァラ」を思い念じると、ヨガ実践のゴール・深い瞑想状態(サマーディ)への妨げが消えます。(第1章27-29節)

そして、「オーム」を唱えイーシュヴァラを念じる行為そのものが、ヨガ八支則というヨガ実践システムに組み込まれています。
具体的には、「ニヤマ」という第2の修行部門のうちの「ソヴァーディヤーヤ(学習)」「イーシュヴァラ・プラニダーナ(イーシュヴァラへの祈念)」にあたります。(第2章32節)

ヨーガ学派も、『ウパニシャッド』の流れを汲み、その権威を認めてます。
しかしながら、解脱に至る過程の論理が「梵我一如」とは若干異なります。
それでも、聖音の力を借り、解脱:苦しみからの永遠の解放の境地を目指すという点で共通しています。

まとめ:ヨガへの感謝・インドへのリスペクトを込めて

「オーム」はサンスクリット語の音節のひとつですが、インドでは宇宙の根本原理を表す神聖なものです。
ルーツは、2500年以上前の宗教的哲学書にさかのぼります。
その流れを汲むヨガにおいても、「オーム」は究極の精神原理を表し、唱え念じると、深い瞑想状態へのルートが開かれるとされます。

しかし、今の日本で「オーム」と唱えることは、宗教的な行為とも捉えられかねず、場にふさわしくないと判断されることもあるでしょうし、強制もできません。

けれども、「オーム」の伝統を理解し、心をこめて唱え、丁寧にヨガを行じれば、ゴールに近づける…、そんな「ご利益」ぐらいは見込めるような気がします。
ちなみに私は、心のなかで「オーム」と唱えると、「ヨガに出会えてありがたいな」と思いますし、ヨガを生んだインドの地バーラト、その思想・歴史・人々へ親しみと尊敬を感じます。
みなさんは、いかがでしょうか。

今日からはぜひ、その意味にも思いをはせながら、あなたの「オーム」を響かせてみてくださいね!

参考文献

  • 『バガヴァッド・ギーター』 上村勝彦 岩波書店 (1992)
  • 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
  • 『インド思想入門 ヴェーダとウパニシャッド』 前田專學 春秋社 (2016)

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