ヨガインストラクターの基礎知識「なぜ女性にヨガが人気なの?」  

ヨガ愛好者には女性が多いという印象があります。
2017年の調査によれば、日本のヨガ人口は推定590万人、ヨガ経験者の68.8%が女性でした。
古くはインドの聖職者階級の男性を中心に実践されてきたヨガが、めぐりめぐって現代日本の女性の人気というのは、興味深いことですね。

今日は、なぜ日本では女性にヨガが人気なのか、1960年代以降のヨガ業界の流れをたどりながら確認していきましょう。
日本でヨガを教えるヨガインストラクターにとって、基礎的な知識となります。確認しておいてくださいね。

西洋人初の女性インストラクターから始まった「ヨガ=健康」のイメージ

1958年(昭和33年)、『いつまでも若く健康で』という本が、日本で出版されました。
著者は西洋人初の女性ヨガインストラクター、インドラ・デヴィ氏です(1899-2002)。
ロシア人の彼女は、インドでヨーガ修行に励み、後にハリウッド俳優のマリリン・モンローやグレタ・ガルボにヨガを指導しました。

以降、日本では1970年代にかけて主婦層の美容・健康目的としてのヨガがブームになりました。
この書籍の出版は、女性の健康とヨガがイメージとして結びつけられたターニングポイントだったといえるでしょう。

1980年代後半には、病院が妊産婦向けにヨガを取り入れ、ヨガをする対象が妊娠中の女性にも広がっていきます。
マタニティヨガという「女性限定」のヨガの分野が確立していきます。

世界的なヨガブームの一方、国内のヨガ市場は衰退へ

アメリカでは1990年代にハリウッドセレブからヨガブームが起こり、世界的な広がりをみせました。
運動量の多いエクササイズ中心のヨガ、フィットネスとしてのヨガでした。
スーパーモデルのクリスティ・ターリントンの著書『Living Yoga』は、その時代を象徴する書籍です。

そして、1999年には、一定の知識と技術を学んだヨガティーチャーを認定するヨガアライアンス制度がスタートしています。

一方で、日本では1995年(平成7年)、カルトによる地下鉄サリン事件などの凄惨な一連の事件をきっかけに、ヨガ市場は衰退してしまいます。

ハリウッドセレブ発のヨガブームがようやく日本に上陸

大ダメージを受けた日本のヨガ業界ですが、フィットネスの分野では、エクササイズとしてのヨガプログラム提供が継続されていました。

そこへアメリカから火がついた世界規模のヨガブームが、日本へ到来。
2004年(平成16)年には、ヨガイベント「ヨガフェスタ」がスタート。
そしてヨガ専門雑誌が創刊。
「ヨガ=宗教」ではなく、「ヨガ=美」というコンセプトにより、ヨガに対するマイナスイメージの払拭がはかられました。

私は、ここでヨガのメインターゲットを「女性」にしたことが、今でも女性にヨガが人気であることに、大きく影響していると考えています。

2008年には日本で最初のヨガアライアンス認定校(RYS)が設立されました。
今では、ヨガインストラクターを目指す人のほとんどが、まずはヨガアライアンスRYT200のカリキュラムによる養成講座を受講するほど、ヨガアライアンスは日本のヨガ業界に浸透しています。

ちなみに、ヨガアライアンスでは、指導対象を「女性」に絞ったヨガ指導者の認定、マタニティヨガ講師 RPYT(Registered Prenatal Yoga Teacher)の認定を行っています。
妊娠中の女性を対象としたマタニティヨガ指導者を養成するこの講座には、女性の生殖やライフサイクルに関する知識やヨガを健康的に適用するテクニックが凝縮されています。

まとめ:「ヨガ=美」のイメージ戦略により、ヨガ人気は女性が先攻

最近では男性もヨガに親しんでいるものの、日本のヨガ市場では女性が多数派です。
マタニティヨガ、産後ヨガ、更年期のためのヨガ、骨盤底筋ヨガ、など、専門分野のカバー率や成熟度からみても女性偏重であることは否めません。
つまり、2020年代でも、いまだに女性のほうがヨガを始めやすい、続けやすい状況にあるといえます。

ヨガインストラクターは、女性のライフサイクル-月経、妊娠、出産、産後、更年期など-への理解と対応力を磨き、様々な年代の女性がヨガに親しみ、健康や幸せに役立ててもらえるように成長していきたいですね。

そして、今後は男性がヨガに参加しづらい状況や先入観を、私たちヨガ業界の側が取り払っていくことも大切です。
日本社会にヨガが浸透し、年齢・性別・ジェンダーを問わずヨガを活用していただけるようになれば、最高ですね!

参考文献