ヨガ哲学が難しいのはなぜ? 一元論・二元論からその理由を考えてみた

ヨガ哲学は何故、わかりにくいのでしょうか?
その理由のひとつは、インド思想が主に一元論であるのに対して、『ヨーガスートラ』のヨガは、徹底的な二元論であることに由来します。

今日は、ヨガ哲学を学びたい人、ヨガ哲学の苦手を克服したい、将来的にヨガ哲学講座を開きたいインストラクターさんのために、ヨガ哲学がスッキリとわかりやすくなる考え方のポイントを伝授します。

インド思想のメインストリームは一元論

ヨガ哲学に関連したインド思想のルーツは、「ウパニシャッド」にさかのぼります。
「ウパニシャッド」は、紀元前4世紀から数百年にわたり成立したバラモン教の聖典群です。
宗教知識を編纂した「ヴェーダ」という聖典の最終章にあたることから、「奥義書」とも呼ばれています。

「ウパニシャッド」の基本思想は「梵我一如(ぼんがいちにょ)」。

梵我一如は、「この世界には、唯一の普遍の存在(梵・ブラフマン)と、人間ひとりひとりにある本質(我・アートマン)がある。そして結局は両者は同じである。」という考え方です。

「ウパニシャッド」は、この世の究極的存在はただひとつ、唯一であるという一元論です。
そして、この「ウパニシャッド」でも、心を落ち着かせ集中するヨーガの実修が説かれます。
「ウパニシャッド」の一元論的なヨガ哲学は「ヨガでこの世の本質は1つだと体得し、解脱なさい」と教えます。

「ウパニシャッド」を絶対的権威とし、ブラフマン(梵)の探究を行う一元論の哲学一派が、ヴェーダーンタ学派です。
このヴェーダーンタ学派は、中世以降のインド思想界での主流であり、強い影響力をもつ「インド的」な学派とも呼ばれます。

肉体鍛錬を行うハタ・ヨーガも、思想的には一元論的なところがあります。

『ヨーガスートラ』は二元論

一方で、『ヨーガ・スートラ』のヨガ、ラージャ・ヨガ(古典ヨーガ)は違います。
「ウパニシャッド」の権威は認めつつも批判的で、思想的には二元論です。

インドの二元論は、こんな考え方です。
この世界の根源は、精神原理と物質原理の2つである。
精神原理「プルシャ」は、純粋清浄な不変の存在。
物質原理「プラクリティ」は、変化する現象。
プルシャはプラクリティをただ観るだけの存在。
プラクリティをプルシャだと勘違いするのが苦悩の始まり。

この二元論を展開した哲学一派が、サーンキヤ学派です。
そして、ヨーガ学派も二元論を採用しており、サーンキヤ学派とは姉妹学派の関係です。

二元論であるヨーガ学派は、根本経典『ヨーガ・スートラ』で、「この世の根源は2つ。その峻別を体得し、解脱なさい。」と教えます。

しかし後代の中世以降には、サーンキヤ学派も一元論に向かうようになります。

ヨガ哲学には一元論と二元論が共存している

ここまできて、お気づきになったでしょうか?
ヨガ哲学には一元論的なものと二元論的なものがあり、この2つが共存しているのです。

『ヨーガ・スートラ』は二元論で、インド思想の主流「ウパニシャッド」やハタ・ヨーガは一元論。

二元論の『ヨーガ・スートラ』をヨガの定義・理論としつつ、一元論的なハタ・ヨーガで実践している私たち。
という、理論と実践のねじれ関係です。

この思想的背景の統一感のなさが、ヨガ哲学を難しくさせている原因のひとつなんですね。

ここを知らずにヨガ哲学を学習すると、消化不良を起こします。
意味が通らないので、難しく感じたり、読んでいる途中で眠くなってしまったり…。
やっぱり自分にはわからないと、学びを止めてしまったり…

綿本彰 先生が、このテーマでブログを書いておられますので、ぜひ参考にされてください。
綿本ヨーガスタジオ提供 YOGA.jp – ヨガ・瞑想を知るホームページ

まとめ:ヨガ哲学は、活かしてナンボ!

いかがでしたか?
今日は、ヨガ哲学を難しくしている理由を、一元論と二元論を切り口に解説してみました。
ヨガ哲学は、一元論的立場・二元論的立場があることを前提に学ぶと、わかりやすいですよ。

ヨガの哲学は、長い歴史のなかで一元論と二元論が交差します。
私たちは正解を求め、つじつま合わせをしたくなります。
けれども、この思想的なカオスがヨガの多様性であり、さまざまな人に共感され受け入れられてきた特長でもあります。
綿本彰 先生がおっしゃるとおり、どっちが正解、ということはないです。

そもそも、一元論も二元論も「この世はどうなっているのかを、頭の中だけで考えてみた」ことにすぎません。
机上の論理より、古くからの知恵を「どう活かし」「どう生きるか」が大事です。

私は、ヨガやヨガ哲学がきっかけになって、イライラしない、怒らないママへと変わることができました。
夫や子ども達は、本当に喜んでくれました。

「もっと多くのお母さんに、幸せに子育てしてもらいたい」
「女性にとって、ヨガ哲学が身近なものになるといいのに…!」
と、日々「どうしたらヨガ哲学がわかりやすくなるのか?」を探究してきました。
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正直、たくさんお金を使ってしまいました(笑)。

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参考資料

  • 『インドの思想』川崎信定 放送大学教育振興会 (2013/8/20)
  • 『インドの「二元論哲学」を読む』宮本啓一 春秋社 (2008/4/20)
  • 『ヨーガとサーンキヤの思想』中村元 春秋社 (1996/9/20)

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