ヨガインストラクター向け損害保険「ヨガ安全指導員制度」の実際

ヨガインストラクター向け損害保険「ヨガ安全指導員制度」の実際

フリーランスのヨガインストラクターさん、ヨガの指導で生徒さんがケガをした場合の備えは、どうしていますか?

ヨガインストラクターを対象にした、ヨガ安全指導員「安全講習会」2020年の調査によれば、「担当するヨガレッスンで生徒さんにケガをさせてしまったことがある」と答えた人は全体の7%。
そして、その原因として最も多かったのが「自分の不適切な指導」で、56%という結果が出ています。

ここからわかることは、指導者である自分が原因で、生徒さんにケガをさせてしまう可能性がゼロではないということです。
万一に備え、治療費などの損害責任を補償する保険があると安心ですよね。

私は、フリーランスのヨガインストラクターで、ヨガ安全指導員制度による「ヨガの保険」に加入しています。

今日は、加入者の私の視点で、「ヨガの保険」とヨガ安全指導員制度について紹介します。

「ヨガの保険」とは

私が加入している「ヨガの保険」は、ヨガ安全指導員制度のもので、賠償責任保険の引き受けは、三井住友海上です。

この「ヨガの保険」に加入するには、2つの条件があります。
1.安全講習会を受講し、ヨガ安全指導員になること。
2.一般社団法人 日本ホリスティックヘルスケア協会に入会すること。

安全講習会を修了すると、自動的に上記2つの条件をクリアし、翌月1日から「ヨガの保険」が適用されます。

ヨガ安全指導員講習会の内容

「ヨガの保険」加入の条件となる安全講習会は、どんな内容なのでしょうか?

安全なヨガ指導をするための心得・知識を確認

安全講習会では、レッスンで生徒さんにケガをさせないための注意点を確認していきます。
講習時間は、途中休憩1回を含む合計3時間。
2021年8月現在、オンラインで開催されています。
開催頻度は月に1回程度で、ビデオオンでの出席が必須です。

講習会の参加人数には、私の受講時はいずれも二十数名でした。

充実のハンドブックつき

ヨガ安全指導員ハンドブック2021

安全講習会で配布されるハンドブックには、生徒さんの安全の観点から、ヨガ指導者の心構えや知識がまとめられています。
安全講習会の時間内では全て網羅できないほど充実した内容で、講習会修了後も手元にき、折に触れて読み返したくなる教訓に満ちています。
掲載内容の一部は、毎年更新されているようです。

ハンドブックの目次(一部を抜粋)

SAFE YOGA STUDYについて
ヨガ安全指導員について

第1章 ヨガのリスクと実態
・代表的なケガの原因と予防
・注意すべきケガとアーサナ

第2章 ヨガインストラクターの心構え
・ヨガの目的を理解する
・ヨガの歴史とルーツとなる教典を理解しよう
・医療と運動指導の違い
…etc.

第3章 安全のための知識
・骨格の特性と注意すべきアーサナ
・安全なヨガ指導のための工夫、準備
・セーフティガイドライン for YOGA
・ヨガインストラクターが知っておくべき法律
・スポーツ外傷の応急処置
…etc.

安全講習会の担当講師はヨガ界の大ベテラン

安全講習会の講師陣は、ケンハラクマ先生、中村尚人先生、三浦敏郎先生など、指導歴の長い方々ばかり。

私は2年連続で、指導歴40年の大ベテラン・クリパルヨガの三浦敏郎先生の講習会を受講。
初年度の講習で、「生徒さんの体験を尊重する」という三浦先生のスタンスに感銘を受けました。
私はクリパルヨガの勉強をしてはいませんが、このヨガ指導のコンセプトには非常に共感し、勇気づけられました。

更新には年に1回の講習受講が必須

新規加入の場合は、講習を受けた翌月1日から1年間、保険が適用されます。
申し出ない限り、自動更新です。
更新する場合は、安全講習会を受講します。更新日の3か月前の講習会から申込が可能です。
忘れずに申込みしましょう。

「ヨガの保険」の補償内容は?

さあ、気になる「ヨガの保険」の補償内容です。

ヨガ指導中の指導者の過失に起因する賠償事故

ヨガ指導中の事故による自分のケガ

つまり、あなたの指導するヨガクラスで、生徒さんにケガをさせた場合、自分でケガをしてた場合の両方が補償されます。

また、マタニティ・産後・キッズ・パーク・ホット・オンラインなど、ほぼ全ての種類のヨガ指導で保険が適用されます。

詳しくは「ヨガの保険(ヨガインストラクター保険)」|ヨガ安全指導員®のWebページでご確認ください。

「ヨガの保険」の保険料は?

「ヨガの保険」の保険料は安全講習会受講費用込みの価格です。
新規…26,000円
更新…20,000円

ただし、ヨガアライアンス認定指導者(RYT)は、20%オフになります。
RYT新規…20,800円
RYT更新…16,000円
ヨガアライアンスのIDをメール添付で提示します。

(すべて2021年8月時点)

あなたは、このお値段を高いと思いますか?
私は、車の保険や生命保険などと比べてみても、格別に割高ではないと感じます。
現代社会でヨガを教えて収入を得る、つまりプロのヨガインストラクターを名乗るための経費扱いです。

私が「ヨガの保険」に加入した理由

「ヨガの保険」の発売は、画期的でした。
NHKの報道で、ヨガ受講によるケガが問題になりはじめていたからです。

私の出身校の先生が、生徒として受けたアジャストが原因で股関節を大怪我された時は、本当にショックでした。
健康のためにヨガをしたら、松葉杖をつくことになった、なんて、決して起きてはならないことです。
ケガをされたご本人はもちろん、ケガをさせてしまった指導者側も、非常に苦しかったはずです。

ミスは完全には防げない

ヨガ指導はヒト対ヒトの行為で、ミスは完全に防げません。
車の安全装置のような精巧なシステムがなく、ほとんど指導者の知識・経験則に委ねられており、その責任は重いのです。

安全講習会の内容は、RYT200を修了したヨガインストラクターにとって当たり前のことばかりですが、この「当たり前」が守られない非常時に事故が起きます。

・クラスに態度のよくない生徒さんがいる
・緊急代講レッスンを担当
・自分の体調が思わしくない
など、ストレスにさらされた厳しい条件下でも、瞬時の判断・対応力を発揮できるでしょうか?
どんな時も、ヒヤリ・ハッとなる状況は絶対に起こさないと、自信をもって言えるでしょうか?

私は、グループレッスンでアーサナや呼吸法を教える以上、絶対的な安全はないと考えます。
常に安全を確認・遵守していく姿勢と、万一の備えは大切です。

実際に「ヨガの保険」に加入してみての感想

「ヨガの保険」に関しては、さまざまな意見があるかとは思いますが、実際に加入してみるとやはり、安心感があります!
安心感があるから指導中に手を抜いても大丈夫、なんてことには決してなりません。
むしろその逆で、当事者意識・危機感が高まります。

ヨガの古典『ヨーガ・スートラ』が提唱する実践法「ヨガ八支則」では、まず最初に「アヒンサー(非暴力)」の教えが掲げられます。
「生徒さんを傷つけない」アヒンサーを徹底するためのセーフティーネットとして、「ヨガの保険」は有用です。

ここで、あえて「ヨガの保険」の欠点をあげます。
まず、事務局がワンオペに近い状況なのではないかと推察されること。
更新のお知らせメールが2通届いたり、保険証券の加入期間が空欄のままで届き、再発行されたりと、初歩的なオペレーションミスに遭遇しました。
ヨガインストラクター業界は小さな業界ですから、こういったサービス面での不手際は珍しくありません(業界の地位向上のためにも、改善していくべきなのですが…)。

もしも変だな?と思った場合は、メールで指摘すれば、丁寧に対応してもらえますので、利用者としてはっきりと主張してください。

次に、「競合がない」というのも「ヨガの保険」のデメリットです。
価格競争がなく、私たちに選択の余地はほぼありません。
スタジオ側から損害を被った場合や、インストラクターの物損補償はありません。
今後、働き方に合わせたオプション付加や、レッスン本数に応じた保険料の減額など、柔軟性が増すといいな、と思います。

おわりに:「ヨガの保険」は、指導機会が多い人ほどおススメ

いかがでしたでしょうか?
いちヨガインストラクターとして、「ヨガの保険」とヨガ安全指導員制度について、率直なところを述べてみました。

この記事が、あなたのヨガ指導の「万が一」を考える一助になれば嬉しいです。

ヨガ専門のインストラクターさんで保険加入を迷っている方は、「ヨガの保険」を検討してみてください。
特に、週15本以上レギュラーレッスンを担当している、20名以上の大規模なグループレッスンを担当している等、指導機会が多いインストラクターほど、事故に遭遇するリスクが高まります。
生徒さんとご自分を守る選択肢のひとつとして、一度は考えてみることをおすすめします。

詳しくは「ヨガの保険(ヨガインストラクター保険)」|ヨガ安全指導員®のWebページでご確認くださいね。

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