アーサナ上達のコツ!|ヨーガスートラ 2章47節

ヨーガの教科書・パタンジャリの「ヨーガスートラ」を、少しずつモノにしていきましょう、という、分かりやすくシンプルな企画です。
前回の記事では、アーサナの定義を確認しました。
今回は、続く第2章47節、アーサナの成立と完成の条件、つまり、アーサナ上達のコツを確認していきます。
ヨーガスートラ2-47;アーサナの成立と完成の条件
prayatnaśaithilyānantasamāpattibhyām
《プラヤットナ シャイティリヤ アナンタ サマーパッティビャーン》
prayatna-śaithilya-ananta-samāpattibhyām
- prayatna:努力、心労、活動、緊張
- śaithilya:弛緩、現象、不安定
- ananta:無限の、終わりのない、永遠の
- samāpatti:遭遇すること、会うこと、偶然、合流
《緊張の弛緩と無限との合流によって》
→ 体の緊張を緩め、無限のものにサマーパッティすることによって、アーサナは完成する
「ヨーガスートラ」の「スートラ」とは
第2章47節の直訳は、「緊張の弛緩と無限との合流によって」。あまりにも短くそっけない印象ですよね。
これは何故かというと、「ヨーガスートラ」が、「スートラ」だからなのです。
どういうことなのか、簡単にお伝えします。
「ヨーガスートラ」の「スートラ」とは何のこと?
sūtra(スートラ)のもともとの意味は、「糸」「紐」「線」です。
古代インドにおいて、思想・哲学の教えを師から弟子へ継承する方法は、丸覚えして唱える、つまり暗誦でした。
そのため、教えの内容は短く簡潔に圧縮した文体で表現されました。この文体のことをスートラと呼びます。
また、この文体を用いた詩句の一節もまた、スートラと呼びます。
スートラの文体で構成された文献もまた、スートラと呼びます。
スートラを作るには非常に高い教養を要するとされます。
スートラは、高尚な文体・一節・文献だということを知っておきましょう。
スートラを理解するための解説が「註解」
スートラの文体は、暗唱には向いていますが、意味を詳細に理解するには不向きだったのでしょう。
スートラ文献には、後代の学者の解説・註解が施されました。
「ヨーガスートラ」の最も古く権威のある註釈書が、学者ヴィヤーサによる「ヨーガ・バーシャ」です。
ヴィヤーサ先生の註解は、古くから「ヨーガスートラ」の内容を補完する大切なもの、一体のものとして考えられ、継承されてきました。
註解を考慮せずにサンスクリットだけで「ヨーガスートラ」を読むと、意味がよく分からないくだりに遭遇します。
例えば、第2章47章の直訳「緊張の弛緩と無限との合流によって」。
キーワードとして覚えるならば、これでOKだと思います。ヨーガの鍛錬を積んでいる人にも、意味が通じるでしょう。
しかし、このブログでは、註解を加味し、最小限の補足をつけて紹介します。また、サンスクリットに特有の概念で、日本語に訳すと理解がぼやけてしまうものは、外来語としてそのまま用いて紹介します。
したがって、第2章47節の補足付きの訳は、「体の緊張を緩め、無限のものにサマーパッティすることによって、アーサナは完成する」としました。
“samāpatti(サマーパッティ)” は、先行する翻訳書において、「合一」「集注」「専念」「瞑想」などと訳されます。

“samāpatti(サマーパッティ)” は、意味的にはディヤーナ(瞑想)やサマーディ(深い瞑想)に非常に近いと考えています。
第1章41節でサマーパッティが定義されますので、ここでは日本語に訳さずにそのままにしました。
まとめ|ヨーガスートラ2章47節
「ヨーガスートラ」第2章47節ではアーサナ(坐法)の成立と完成の条件が述べられました。
まず体の緊張をほどくことでアーサナが成立し、その状態で注意の対象を無限の概念に注ぐことによってアーサナが完成する。
アーサナは、まず身体面を調整し、その後、精神を集中させていく。
これが、ヨーガスートラにおけるアーサナ上達のコツです。
なお、スートラは暗誦用に凝縮された文体ですので、理解しづらい場合は、註解を活用するとよいでしょう。
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それでは、本日はここまで。次回をお楽しみに。
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参考文献・資料
- 世界大百科事典 第2版
- まんどぅーかのサンスクリット・ページ WEBマルチ梵語辞典
- Sage Patanjali’s Yogasutras – Chanting by Dr Rajani Pradhan
Youtube動画、広告表示あり。女性の声。 - 『サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「講義」 附:ヨーガスートラを読むためのサンスクリット講義』 菅原誠 NextPublishing Authors Press (2021)
- 『Certificate of Yoga Professionals: Official Guidebook』 Excel Books (2016)
- 『やさしく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ』 向井田みお アンダーザライト (2015)
- 『ヨーガ・スートラ パタンジャリ哲学の精髄 原典・全訳・注釈付』 アニル・ヴィディヤーランカール(著), 中島巖(編訳) 東方出版 (2014)
- 『インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ』 スワミ・サッチダーナンダ めるくまーる (2008)
- 『ヨーガとサーンキヤの思想』 中村元 春秋社 (1996)
- 『解説ヨーガ・スートラ』 佐保田鶴治 平川出版社 (1983)
- 『ヨーガ書註解 – 試訳と研究 』 本多恵 平楽寺書店 (1978)
- 『中公バックス世界の名著1バラモン教典・原始仏典』 中央公論社 (1969)
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